灰色の箱

アニメ制作者が観たアニメ考察と制作の流れなどを書くつもり

planetarian(プラネタリアン) 星の人〜Keyの中で輝く無窮のきらめき〜

先日(3ヶ月前)の君の名は。を見た際に一緒に観たのが、「planetarian(プラネタリアン)」です。

 

言わずと知れたKeyブランドの作品。

 

2個前の記事がシャーロットの話だったので多くは語りません。

 

sylphyanime.hatenablog.com

 

 

元々は何の情報もなく、関係者が程近くにいる事がきっかけでニコニコ動画の配信版を見ておりました。

 

毎週配信だったのですが、久しぶりに週一の更新が楽しみなアニメに出会い、元祖泣きゲーブランドの地盤の強さを感じました。

というのも全くの新作ではなく、2004年の作品なので、古き良きKeyを堪能できるとも言えるのですが、撮影技法や作画、3DCGに関しては現代の技術を盛り込んでいるのでテーマである「星、プラネタリウム」の輝きが美しく表現されているのです。

 

以降本編のネタバレを含みますが、観ていない人にも見てもらいたいので個人判断にお任せします。

 

 

 

 

 同時期に公開されている「君の名は。」も星が一つのテーマである作品ですが、本作には星が一切登場しません。 〜星の人〜のサブタイトルであるにも関わらず、作中に出てくる星は全てプラネタリウムで投影された偶像の星々です。 しかし、偶像の星に確かな感動を覚える要素が含まれています。

 

 その一つが「閉塞感」

 

屑屋の過去、現在で描かれる劇場版ですが、 本編中に晴れているシーンは1度もなく、 過去編に関しては、回想を除くと登場人物もわずか2人+数基(敢えてゆめみちゃんは1人と数えます) 本当に寂しく、寂びしいのです。

過去編の内容を見ても、基本は屑屋の一人語りなのですが、生きとし生けるものが一人しかいない時に感情移入する存在は大きな1しかないことを知らされました。

ゆめみの解説を聞いてる時はお客の1人であり、記念の花束を貰った1人であり、屑屋でもある。 ひとりぼっちはさみしいもんな。 Key的には、1人じゃ寂しいから2人手を繋いだ。の方がよいかもしれない。

 

TVシリーズ過去編の出来がよく、劇場版が総集編+新規カット+正当続編ということもあり、蛇足になるのではと疑ってはいたのですが、見事に打ち砕かれました。

総集編を含めた再編集の構成は、視聴済のユーザーが「何故、このシーンをこのタイミングに入れたのか」「あのシーンが見たかった」などの視聴者にとってのストレスをいかに軽減するかは大事な要因になると思います。再編集の場合、カットを入れ込む順番により感情移入の度合いも変化してくるのでこの辺りはシナリオ会議に出ている人達の構成力の見せ所になります(シナリオ会議に関しては、後述します。)

その点、プラネタリアンはTVシリーズを見ていない人でもしっかり作品へと没入できる構成だったと思います。

屑屋として生きていた男は星に魅入られ、『星の人』へ。物語としての完結は劇場版で完結する訳ではなく、『星の系譜』として未来へと繋がる。劇中の屑屋のラストのセリフがこの映画の全てだと思います。

世の中に疲れ、何もかも嫌になった皆さんが見ると、ただただ泣けます。劇場では自分も隣のカップルも微動にせず、泣くという生理現象だけ行っていました(彼女の方は号泣しているように見えました)。客層としても深夜の回とはいえ、スーツ姿のおじさんの姿が多かったのも非常に印象的でした。

 wikiを参照すると、クラナドリトルバスターズ!という絶対的人気作に発売時期が挟まれながら、およそ10年の時を経て、Keyの中で輝く無窮のきらめきが映像化している事実をまた見ていない皆さんにも実感していただきたいとオススメさせていただきます。

 

 

 

【シナリオ会議の話】

 

アニメの制作に触れるブログという趣旨を忘れ、ただのアニメファンブログと化している事実を受け止めなければならない。 

せっかく話題が出たのでアニメの根本を決めるシナリオ会議について少しだけ。

 

シナリオ会議とは、シリーズ構成・脚本を中心に行われる会議になります。

参加者は、脚本家(シリーズ構成を兼ねる場合もあり)、監督(副監督がいる場合は参加)、メーカー(ゲームであれば担当Pなど)のプロデューサー及び担当者、販売元(ANIPLEX、創通などDVDで最初の方に出てくる会社)のプロデューサー、制作サイドのアニメーションプロデューサー、設定制作。

上記のメンバーが最低限のメンツになると思います。場合によっては、エグゼクティブプロデューサー、原作者などの偉い人が参加したり、制作デスクが参加する可能性もあります。

具体的に何をするかというと、脚本家が持ってきたシナリオをあーでもないこーでもないと推敲する作業になります。例えば、君の名は。のシナリオ会議で誰かが「三葉ちゃんの中に瀧君が入ってても、瀧君は硬派の中の硬派なので胸なんて揉まない」といえば修正になる可能性もあります。

他にも制作サイド側から内容が詰まりすぎていて尺に収まらないとなった時は、バッサリとカットされる事もあります。原作ありきのアニメでオリジナル展開があった場合は、この会議で全てが決まるといっても過言ではありません。

 

そのため、シナリオについて文句が言いたいオタク達は脚本家のみを責めるのではなく、会議出席者の総意なので責任者全員を非難してあげて下さい。

 

というのは冗談ですが、基本的には何度かセリフの言い回しなども含めて推敲しているので作品での全てになります。

たまにコンテ時やら監督の鶴の一声などで内容が変わったりもします。(特にセリフの言い回しなどはアフレコ直前に変わったりする事も多々あります。) 

アニメのストーリーが納得いかねぇから、俺の手で変えてやる!!と思っている諸君は今からでも遅くないので脚本家を志すと良いと思います。